古都2016年12月13日

川端康成が書いた小説の映画化です。古都とは京都のことで、西暦794年から1867年頃までの約1000年の間、日本の首都だったところですね。昭和三十年代に書かれた原作が現代を舞台としてして改めて制作されたという事です。歴史と伝統の街を描くうえで作者は意図的に現代的な匂いのする小道具を画面から外したのかもしれません。傾きかけた木造建築の呉服屋では畳敷きの部屋に机が置かれていて、主人公の佐田千重子さんはソロバンを使って帳簿をつけているようです。ご主人の竜助さんと共に一日中和服で暮らしている姿が印象的です。
景観保持ため、京都には建物のデザインや高さに関して厳しい規制があると聞きます。だからなのか超高層ビルがありません。未だに瓦屋根の町屋が多く残っていて、日本の他の大都市にはない独特の風景が見られます。それでも開発の波は容赦なく押し寄せていて、古くからある織物屋は廃業に追い込まれ、伝統的な町屋にも強引な建て替えの勧誘があるようです。そのような中、佐田夫婦は受け継いできた伝統を守ろうとしているのです。自分たちの娘にも後を継いでもらいたいと考えていますが、強要はできないと思っているのです。苦しいと思います。
時代の波に逆らってまで新しい世代に伝統を受け継いで行くのは簡単なことではないでしょう。
もう一つの古都としてフランスのパリが登場します。私の中ではこの作品に海外の都市が出てくるのには違和感がありますが、グローバル化した現代においては必要な表現だったのでしょうか。
京都は古い街です。古くからの伝統を守っていかなければならない街です。繁栄からは取り残されるかもしれませんが、古いことに価値があるのです。
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