ザ.バニシング 消失2019年04月24日

宣伝ではサイコサスペンス史上No. 1の傑作という触れ込みだ。製作は1988年(昭和六十三年)なので、携帯電話がない時代である。レクター博士やリスベット.サランデルのような極端な人物は登場しない。
冒頭は車で南仏の郊外を旅するオランダ人カップルの姿が描かれる。仲が良く幸せそうに見える二人である。途中、立ち寄ったドライブインで女が忽然と姿を消す。いつまでも帰ってこない女に不安を抱いた男は車のフロントガラスに「車で待っていて」とメモ書きを貼り付けてドライブインの中を探しまわる。彼女を見たという従業員はいるものの、どこにいったのかは誰にもわからない。空しい時間が過ぎて夜になり「警察を呼んでくれ」と支配人に訴えるのだが「警察は動いてくれません。朝まで待ちましょう」と言われてしまう。
ここで画面は犯人側の視点に切り替わる。時間軸が遡って、犯人が犯行の準備段階において試行錯誤している様子が展開されて行く。妻と二人の娘を持つ普通の男である。清潔な服装をしているし、たとえ街中を一人で歩いていても全く目立たない容姿で、完全に日常の中に埋もれて犯罪の匂いなどまるでない。山荘を買い、そこで一人、人体に睡眠薬が作用する時間をストップウォッチで計っている。被害者を車の中に誘い込むリハーサルを繰り返す。
予行演習を経て、実際に街中に繰り出し、何度も女性の誘拐を試みる。そして失敗を繰り返す。やがて問題のドライブインに行き着いて、冒頭のオランダ人カップルに遭遇するのだ。

映画は三年後に舞台を移し、失踪した女を探し続ける男と、彼に手紙を送り続ける犯人との心理戦争が始まっていく。犯人も被害者も、どこにでもいる普通の人物である。

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