「羊とオオカミの恋と殺人」「THE INFORMER 三秒間の死角」「ラスト.クリスマス」「HUMAN LOST 人間失格」2019年12月06日

羊とオオカミの恋と殺人

築年が経過した1DKのアパートが舞台である。壁に簡単に穴が空き、隣の部屋が丸見えである。

私などは学生時代、四畳半一間のアパートに住んだクチであるが、時代が違う。現代においては最安値であろうクラスの住居であることは間違いがない。ここに住んでいるのは受験に挫折し、予備校すらやめてしまい、バイトで食いつなぐことすらままならない黒須くん。現代の「男おいどん」である(わかる人だけわかってください)。

壁の穴の向こうに住んでいるのは殺人鬼である。部屋に誘ってご飯を食べさせてくれ、しかも若くて可愛い女の子。でも殺人鬼である。軽~いタッチの映画で、す。本当に軽~いですよ。


THE INFORMER 三秒間の死角

犯罪捜査に関わる情報屋の男の話。FBIでも警官でもなくどこの組織にも属していない。おのれの刑期と引き換えに麻薬売買の組織に潜入した元犯罪者である。故に状況次第で躊躇なく切り捨てられる。密売組織の親玉を追い込むためにFBIに協力する男だったが、捜査の過程でニューヨーク市警の警官を見殺しにする羽目になる。

複雑な事情で刑務所に舞い戻った男は、誰も自分を守ってくれないと悟ったとき、家族のもとに帰るために、決死の行動を起こすのだった。

麻薬組織とFBI、ニューヨーク警察、情報屋、四つどもえの戦いが面白いですが、主題になっているのは家族と一緒にいたいお父さんの努力です。

ラストシーンに登場する公園は先日鑑賞した「マチネの終わりに」のラストと同じ場所ですな。

ファック、ファック、ファックが連発される劇中の言葉遣いは外国人の私が聞いていても愉快なものではなく、壁の落書きみたいな刺青も阿呆と違うかと思いますが、私が古いんでしょうかね。作品は面白かったですよ。


ラスト.クリスマス

なんの予備知識もないままに鑑賞した作品。題名がワム!の名曲そのまんまですが、本当に「ラスト.クリスマス」が主題歌になっているだけではなく、ジョージ.  マイケルの他の歌も散りばめられていて、心は「平成」を飛ばして「昭和」に戻ったような気分である。

舞台は英国のロンドン、主役は旧ユーゴスラビアから家族とともに移民してきたケイト。先住民と流入してきた移民たちの軋轢は、世界中で何世紀も前からあるように思いますが、近年においてまた注目されている問題なのでしょうか。この作品の中でも日常の風景の中に外国から移住してきた人たちに優しくなれない英国人の方が登場します。この部分は日本においても他人事ではないですね。

少々だらしがない主人公で、私はあまり好きになれないタイプの女性なのですが、クリスマスのおとぎ話としてはなかなか良かったと思います。


HUMAN LOST 人間失格

昔、太宰治の「人間失格」は読んだ。主役の名前やセリフ、道化などのキーワードは小説と共通するけれど、もちろん全く別の話である。

昭和百十一年という時代設定がわかりにくいですが、西暦に直すと2030年代の中頃なので、そう遠くない未来です。医療革命によって日本人の寿命が百年以上になったという。人間がロスト体と呼ばれる異形の怪物に変容するという理屈が今ひとつわからなかったが、百二十歳に到達すると人間合格という式典があるというのは誰が考えたのか知らないが傑作である。


アクセスカウンター