男はつらいよ 寅次郎純情詩集(4Kデジタル修復版)2020年08月09日

寅さん十五本目。第十八作、昭和五十一年の公開。
前半部の寅さんはなかなかのロクデナシぶりで渡世人の本領発揮というところであった。
満男の家庭訪問に来た若くて綺麗な担任の雅子先生に一目惚れをして博とさくらを差し置いて出しゃばってしまい場をぶっ壊す。激怒したとらやの面々に夕飯の席で拒絶され、捨て台詞を残して旅に出てしまう。旅先の別所温泉では馴染みの旅芸人一座に大盤振る舞いをして無銭飲食で警察に捕まってしまう。少しも悪びれるところはなく、当たり前のようにさくらを長野県にまで迎えに来させ、当たり前のように金を使わせる。釈放されたあと、寅さんを置いて駅の改札口を一人さっさと行ってしまうさくら、あんなに怒っている姿は珍しい。
柴又に帰ったところで出会うのが雅子先生の母親の綾さん。女学生時代からとらやで団子を買っていたというお得意さんで、少年時代の寅さんも覚えていた。入院していた病院を三年ぶりに出て、帝釈天近くのお屋敷に帰って来たという。昼間は一人ぼっちで寂しいから遊びにいらしてねと言われ、弟分の源公と一緒に綾さんのところに通い詰めるようになる寅さん。
ある夜、とらやに帰った寅さんがお屋敷での夕食を語る名調子が相変わらずさえていて、聞き惚れてしまった。食前の祈り、壁に花、向かい側には「最後の晩酌(正確には晩餐)」の絵、豪華な食器のそこにちょこっと盛られたご飯。それを上品に食べる綾お嬢様。器の淵に当たった象牙の箸からチリーンチリーンと音がする。一回見て来ただけだからうまく表現できないけれど「寅のアリア」とも言われるらしい渥美清さんの独演は名人芸だと思います。
今作に関しては前半部で寅さんに嫌悪感を抱いてしまう人もいるかもしれないが、マドンナの余命のことを知らないまま、彼女の体調を心配して気遣う姿は本気なだけにその人柄を見直してしまう。「人はなぜ死ぬの」という深刻な問いに「増えすぎた人に押されて陸から海にボチャンと落ちるから」と答える寅さん、なにやら気持ちが楽になるようで不思議である。

日本の風景はとてもいい。このところ洋画を見るとああ日本に帰りたいと思ってしまう。本格的に寅さん中毒だなこりゃ。

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