梅田墓2020年08月16日

大阪ステーションシティの十一階、映画館のロビーを出るとノースゲートビルディングの風の広場に出る。十一階だが、大阪にはあまり高い建物がないので、大阪駅北側の景色が一望できる。うめきたの再開発地区の向こうに見えるのが梅田スカイビルなのだ。ここの四階には映画館、シネリーブル梅田があります。以前はよく通っていたのですがね。最近はご無沙汰しております。
現在工事中のうめきたで、江戸時代ににあった梅田墓の発掘調査が行われていて、多くの人骨が出土したという。副葬品として六文銭や二朱金、キセルや土人形などがあったそうな。
江戸時代の大坂は、大坂城周辺が中心地だったろうから、梅田あたりははずれに位置していたのかな。なにしろ墓場だったのだからな。

男はつらいよ 寅次郎と殿様(4Kデジタル修復版)2020年08月17日

寅さん十六本目。第十九作、昭和五十二年の公開。
愛媛県の城下町、大洲市に立ち寄った寅さん。伊予大洲藩十六代当主の老人と知り合う。世が世なら殿様だった人物なのだ。演じているのは(私は知らなかったが)サイレント時代から日本映画界で活躍していた嵐寛寿郎。現代になっても殿様のごとく振る舞う地元の名士の爺さんを大真面目に演じています。無礼な執事役の三木のり平に「そこになおれ」とか叫んで床の間に飾ってあった刀を抜いて斬りかかろうとする。「殿、殿中でござる」羽交い締めで止めようとする寅さん。腰を抜かして廊下を退散してゆく三木のり平、志村けんのバカ殿様そのまんまの光景だった。
その後、死んだ息子の嫁に会いたいと東京まで出てきた殿様。軽口だったとはいえ「探す」と約束した手前、翌日から「マリコを知らねぇか」と近所を探して回る寅さん。博の計算によると一日百軒探したとして東京全部回りきるまで百年以上かかるらしい。
一日で音を上げた寅さんは「俺は逃げ出すよ」と言ってまた旅に出ようとするのだった。
観客にはわかっているが、映画の冒頭、伊予大洲の旅館で寅さんが鮎の塩焼きを差し入れした訳ありの若い女がマリコさんなのだった、、、。
「娘さん、見なよ」夜の肘川河畔に蛍が舞う。

偶然だけど今夜のおかずは鮎の塩焼きだった。ビールがうまい。

男はつらいよ 寅次郎頑張れ!(4Kデジタル修復版)2020年08月17日

寅さん十七本目。第二十作、昭和五十二年の公開。
この作品は二十作目で区切りの一本である。「寅次郎頑張れ!」は寅さん(渥美清さん)へのエールなのだろう。映画はこれからも続くよ、みたいな。
劇中に登場しますが、満男が歌っている電線音頭のことです。かつてテレビにおいて、東村山音頭に匹敵するほどに流行った唄でありまして、自分が子供の頃、喜んで見てたなぁ。満男の気持ちがわかります(愚)
とらやに下宿している中村雅俊と近所の定食屋で働いている大竹しのぶの恋愛がメインになっているという、これまでとはやや異色な作品でありまして。思えば、第三十作目の沢田研二と田中裕子の回が、似たような展開だったような気がしないでもない。
中盤で失恋したと勘違いした中村雅俊(良介)がガス自殺しようとして、とらやの二階を爆発させるというシリーズ最大とも言えるスペクタクルシーンがある。このことでいたたまれなくなった良介は仕事を辞めて、故郷の長崎平戸に帰ってしまうのであった。
そんな良介を気にかけた寅さんが平戸を訪れる。出会ったのが良介の姉、藤子。一発で惚れてしまった寅さんは、そのまんま平戸に居ついてしまい、良介の実家の店の手伝いをするようになるのだった。
ラストシーンで再会するのはいつぞやの旅芸人一座。寅さん、また散財してさくらを呼び出すことなんざないようにね。

男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく(4Kデジタル修復版)2020年08月23日

寅さん十八本目。第二十一作、昭和五十三年の公開。
昭和五十三年(1978年)は私が映画館で最初に字幕スーパー付きの洋画を見た年だった。
タイトル前のオマケエピソードは「未知との遭遇」のパロディで、帝釈天に空飛ぶ円盤が飛来する。ハリボテみたいな出来の宇宙船にさくらは「予算がないのね」と呟く。この作品は夏の公開だったそうだけど、ちょうどその時期の私は「スター.ウォーズ」を見て、目をキラキラさせていた。

旅先で熊本の温泉に長居し過ぎてしまったが故、宿代を払えず、またさくらを呼び出して、九州まで迎えにきてもらうという、懲りない寅さんである。反省の気持ちはあるようで、旅館の床の間に飾ってある書には「反省 寅次郎」と、ある。なにやら地元の人々には愛されていて、車先生などと呼ばれて、サインなど求められるのだった。口が達者で愛嬌があるから人から慕われるのですな。大木の下で女にフラれて泣く若者の現場に遭遇し、「青年、女にフラれた時には、うんじゃらなんじゃら」と、声をかける寅さん、尺八の音が響き、頭を下げる青年と歩き去る寅さんの後ろ姿が延々と映される。青年の名は留吉、演じるのは武田鉄矢、女好きなのにもてない若者役がドンピシャにハマっています。
さくらに怒られて反省した寅さんは柴又に帰り、しばらくの間は真面目に店の手伝いをしてとらやの人々を喜ばせるのだが、長続きはしない。
マドンナ(紅奈々子)は松竹歌劇団のスターで、さくらの同級生。浅草の国際劇場で公演をやっていて、寅さんは上京してきた留吉とともに通いつめるようになるのだった。
松竹歌劇団はすでに解散していて劇場も解体されて別の建物になっているらしい。映像を見る限り(女性だけなので)宝塚歌劇団に似ているような気がします。

男はつらいよ 噂の寅次郎(4Kデジタル修復版)2020年08月23日

寅さん十九本目。第二十二作、昭和五十三年の公開。
大井川の橋の上で寅さんとすれ違う雲水は葛飾立志編で山形の住職を演じていた大滝秀治である。役柄の上では同一人物ではないかもしれない。「おぬし女難の相があるぞよ」などと言ってくるが、「こちとらそれでいつも苦労が絶えないんだよ」が寅さんの返答であり、劇場の観客も同意見であるのである。その後、木曽路に向かうバスの中で再会するのが、シリーズ中の重要人物、博の父親の飈一郎さん(志村喬)だった。一作目では北海道の大学の教授だったと記憶しています。今作では信州の寺を巡ってそこにある古文書などを調べて回っておられるようだ。寅さんは親戚の教授に同行し、教授の金で旅館に泊まり、芸者を呼んで酒を飲んでいる。同席している教授に歌を歌わそうと煽るが、教授は「私は眠いんだよ」と断り、芸者を連れてなおも外に遊びに行こうとする寅さんに「持って行きなさい」と自分の財布を預けるのだった。どちらも大人物である。
卓に置いた今昔物語の文庫本の中にある逸話をわかりやすく寅さんに語って聞かせる教授の話は映画を見ている観客の心にも響くもので、前半の旅の部分は仙人みたいな志村喬の佇まいを含めていい場面になっていました。
後半、職安から紹介されてとらやにやってくる美人の店員が離婚をひかえた人妻の荒川早苗(大原麗子)です。もちろん、寅さんは惚れます。マドンナが美人だと観客の気分も盛り上がりますが、大原麗子はシリーズ中、屈指の美人です。今回ばかりは相手が美し過ぎてカラダが固まってしまうのか、なにやらぎこちない寅さんなのだった。早苗に惚れている幼馴染の高校教師を演じているのが室田日出男です。「野獣死すべし」で夜行電車の中、伊達邦彦と対峙したあの刑事です。
ラストシーンで再会するのは冒頭に登場した失恋女、泉ピン子。結婚直後で新郎とともに蒸気機関車に乗っている。機関車は走る。走り去っていく。
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