男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋(4Kデジタル修復版)2020年09月15日

寅さん二十四本目。第二十九作、昭和五十七年の公開。
タイトルバックの映像が江戸川ではない作品はおそらく初めてではないだろうか。シリーズ開始からいくつかのパターンが決まっている「寅さん」ですが、今作では少し変則的な部分が見受けられます。前半部分で寅さんはとらやに帰って来ません。鴨川の見える土手でボロい下駄をはいた老人の鼻緒を直してあげる寅さんだったが、実はこの老人、人間国宝の陶芸家(加納作次郎)でありまして、気に入られた寅さんは加納老人の自宅兼工場に出入りするようになります。そのまんましばらくの間、京都に居ついてしまうわけです。ここで女中さんのような仕事をしているのが今回のマドンナ、かがり(いしだあゆみ)です。同時に工房で暮らす先生の弟子や婆さんたちとも仲良くなるのだ。そんなとき、とある事情で加納先生に叱責されたかがりさんは故郷の丹後に帰ってしまいます。自分の言い過ぎを後悔した先生は、寅さんに旅の途中で寄ることがあったら丹後に行き、かがりさんの様子を見て来てほしいと頼むのであった。
言われるままに港町丹後を訪れた寅さん、かがりの家を尋ねるのですが、帰りの船を逃してしまい、そのまま一晩泊めてもらうことになってしまいます。ここで意外な事実が判明するのです。晩酌に預かっている席で、なんとかがりさんが自分に好意を持っていることがわかってしまうのだ。その場は眠くなったとかがりさんをはぐらかし、寝床に入ってしまう寅さん。翌日は逃げるように帰ろうとしますが波止場まで見送りに来た彼女に後ろ髪を引かれるような気持ちで丹後を後にします。
柴又に帰り、自分の行動を反省し「俺は馬鹿だ」と恋の病に臥せってしまう寅さん。これまでならば失恋して旅に出るというのがお決まりのパターンだったのですが、失恋して帰って来て、とらやで寝込むというのは珍しいことなのだった。当然ながらここで話は終わりません、なんとかがりさんが柴又まで寅さんを追いかけてくるのです。とらやでそれとなく手紙を握らされ、鎌倉での逢引に誘われるのでした。
今までマドンナから積極的にアプローチを受けた経験のない寅さんは完全に腰が引けてしまって、せっかくの機会をものにできず、涙を流すという過去にない展開になります。
ラスト近く、人間国宝から譲り受けた名器の茶碗を東京で開催する個展のために貸していただきたいと、先生の弟子がとらやを訪ねて来ます。茶碗はタコ社長の灰皿になっているのだった。

盆正月、一年に二回(初期には年三回)のペースで十三年、しかも二十九本目でこのクオリティー、驚異的な映画である。

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