男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎(4Kデジタル修復版)2020年09月30日

寅さん二十七本目。第三十三作、昭和五十九年の公開。
私は札幌で暮らしたことがあるので実感があるのですが、釧路は遠い。札幌釧路間は大阪東京間に匹敵するのではないかと思うほどに移動時間がかかるのだ(実際にはそれ以上かかります)。北海道は大陸である。寅さんは東北の岩手を経て北海道に渡って釧路から根室に至る。根室は北方領土の歯舞列島が目の前にあるような場所である。文字通り北の果てなのだ。寅さんのなんと自由なことか、今更ながら、その行動範囲の広さに驚かされるのだ。題名のごとく、前半の北海道では霧の場面が多い。夜の宿屋では港から汽笛の音が聞こえる。昼間は雨が降り、どんよりとした雲が空を埋め尽くす。
マドンナはフーテンの風子(中原理恵)で、ひと所に落ち着けない性格の若い美容師の女である。散髪屋になんの紹介もなく飛び込みで雇ってもらおうと売り込むが店主に体良く断られてしまう。そこで客として頭を刈っていたのが寅さんなのだった。フーテンつながりで一緒に旅をするようになった二人は彼女のおばがいるという根室に向かうのであった。途中で逃げた女房を追いかけて北海道までやって来たサラリーマン(佐藤B作)とのエピソードが絡みますが、北の大地の荒涼とした風景とともに暗い話でありました。
根室で遭遇するのがサーカスのオートバイ乗り、トニー(渡瀬恒彦)で、この男が風子に絡んでくるようになります。おばの紹介で地元で働くようになった風子。夜の宿屋で遠くに汽笛を聞きながら酒を酌み交わし、寅さんは一緒に旅を続けたいという風子に真面目に働くように優しく諭すのだった。翌日、寅さんは根室を後にします。
中間の出来事は端折られているのですが、のちに風子とトニーは東京で同棲するのです。ヤクザ者のトニーとの暮らしは過酷なものであったようで彼女は体を壊して寝込んでしまうのであった。
とらやを訪れ「風子が会いたいと言っている」と伝えるのがトニー。「挨拶は抜きだ。話は道道に聞く」と飛び出して行く寅さん。
寅さん、風子、トニーは三人ともヤクザな性格の持ち主で「渡世人」の雰囲気を持っており、お互いに同じ匂いを感じ取っています。寅さんは若い風子には堅気で幸せになってほしいと考えていて、それゆえ、トニーには「手を引いてもらいたい」と。しかし男と女の話は第三者の寅さんが口を挟んで解決するものではないのだった。前半の夜霧のように苦くて苦しい展開だった。
この映画は喜劇なので、最後には救いのある展開が待っています。寅さんは北海道でヒグマに襲われます。本物だという設定なのですがぬいぐるみのクマが観客を笑わせます。

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