男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日(4Kデジタル修復版)2020年10月25日

寅さん三十三本目。第四十作、昭和六十三年の公開。昭和最後の作品。
俵万智の歌集「サラダ記念日」が原作というか下敷きになっていて、作者として俵万智の名前もクレジットされています。四十本目ですが侮ってはいけません。傑作です。
長野県の小諸、駅前のバス停で知り合った老婆に気に入られ、家に招かれる寅さん。一人暮らしのおばあさんに快くもてなされて、晩酌にもあずかりながら背後の仏壇からおじいさんの幽霊にも遭遇し、楽しく怖い一夜を過ごすのでありました。翌朝、家を訪ねてくるのが病院の医師、原田真知子さん(三田佳子)で、病気のおばあさんを迎えにきたのであった。自分の死期を悟っているおばあさんは「後生だから」と両手を合わせて家で死にたいと言うのですが「元気になったら帰ってこられるから」と説得するお医者さん。寅さんは自分も一緒に病院まで付き合うからと声をかけます。するとおばあさんは「あんたがそう言うなら」と入院することに同意するのでした。車の中で「ちょっと待って」と長年暮らした家を目に納めるおばあさん。朝日に照らされながら落ち葉が舞う古い家の風景。自分にも田舎にあのくらいの年の親がいて、実家は平屋建ての古ぼけたあばら家なので、その気持ちがよくわかる場面でありました。
入院の経緯から真知子先生に感謝された寅さんは先生の家に招待され、そこで先生の姪である由紀ちゃん(三田寛子)と顔見知りになるのであった。早稲田大学の学生だと言う由紀ちゃん、ちょうど満男が大学受験を控えた年頃だと言うこともあって、寅さんは都の西北にあるキャンパスを訪ねて行くのであった。教室で学生たちに混じって講義を受けることになるのだが、Industrial Revolution(産業革命)におけるワットの蒸気機関の話で手を上げて教授に質問をするのでありました「さっぱりわからない」と。十八世紀の英国人であるはずのワットを知っていて、そんなはずはない奴は日本人で宮城県出身だと言う。本気で言っているから面白いのですが、話が進むうちに寅さんが言っているのは二十作目(寅次郎頑張れ)に登場したワット君(中村雅俊)だと言うことがわかってくるのでありました。とらやガス爆発事件の一件が面白おかしく語られて聴講生たちにバカ受けし、講義はぶっ壊れるのでありました。昭和六十年代のキャンパスライフを見ることができます。
寅さんの顔は真知子先生のなくなった旦那さんに面影がにているらしく、二人はいい雰囲気になるのです。後半、おばあさんが危篤になり、ついには亡くなってしまう。家で死にたいと懇願するおばあさんを無理やり入院させてしまったことで辛い思いをしていた先生は寅さんの肩で涙を流すのでした。
最後は小諸の真知子先生の家で由紀ちゃんが作ったサラダを食べて、寅さんは去っていく。
「寅さんが(この味いいね)と言ったから師走六日はサラダ記念日」
「旅立ってゆくのはいつも男にてカッコよすぎる背中見ている」

この作品から「とらや」の屋号が「くるまや」に変わり、店員に三平が雇われています。

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