男はつらいよ 寅次郎の休日(4Kデジタル修復版)2020年11月08日

寅さん三十六本目。第四十三作、平成二年の公開。
冒頭の夢場面、平安時代の貴族が面白かった。宮殿で和歌を詠んでいる車小路寅麻呂、そこに道に迷った美しい女人が、、、。

受験に合格し、念願の大学生になった満男。前作に続いて連続出演の泉ちゃん(後藤久美子)、寅さん相手のマドンナ(今回は泉の母親)もいるのですが、私が思うには(ぼくの伯父さん)(寅次郎の休日)における事実上のマドンナは及川泉である。
「母親探しの旅」というのはよくあるように思いますが、本作は「父親探しの旅」がテーマとなっています。娘が父親を訪ねて日本を縦断するという話です。冒頭、泉が満男を訪ねて東京にやってくる。満男は大喜びするのだが、彼女の真の目的は母親と別れた実の父親に会うことだったのだ。
事情を察した満男とともに父親の勤める勤務先に出かけていく泉ちゃんだったが、そこで聞いたのは父はすでに退職していたという現実なのであった。あきらめ切れない泉は父親の元勤め先から聞いた大分県の日田へ行くことを決心するのだ。送りに来た東京駅の新幹線ホームでそのことを聞いいた満男は発車のベルが鳴ったとき、思わず列車の中に乗り込んでしまう。
前作の(伯父さん)は満男が泉を追いかけて九州にバイクを飛ばす話だが、今度は泉が父親を追いかけて九州に向かって新幹線に乗り込む話である。同行する満男はおまけであり金魚の糞である。
そこのろ、泉の母親、礼子(夏木マリ)が娘を訪ねて柴又のくるまやにやってくるのであった。泉が九州に旅立ったことを知った礼子さんは偶然その場にいた寅さんとともに、満男と泉を追いかける旅に出る。最終の新幹線には間に合わず、寝台列車のブルートレインで日田へと向かうのだ。娘のことが心配で眠れない礼子さん、向かい側の寝台にいる寅さんに缶ビールを飲みながら愚痴をこぼすのであった。フーテンの寅はこんな時の話し相手には最適な男なのだった。
泉が父親(寺尾聡)に会う目的は母とよりをもどして、また一緒に暮らしたいと言うためなのだった。しかし、日田の愛人宅で幸せそうにしている父親を見て何も言えなくなってしまう。愛人の女(宮崎美子)も人の良さそうな穏やかな人物で、むしろ自分の母親よりも優しそうな雰囲気なのだ。敗北を感じた泉はそのまま名古屋に帰る決心をする。涙を流す泉の横で困り果てている満男であったが、そこに登場するのが寅さんと礼子さんのコンビなのです。四人はそのまま地元の温泉旅館に一泊し、まるで家族のような晩餐が始まるのであった。
その夜、夫を取り戻せないことを思い知らされた礼子さんの慟哭とそれを慰める泉の声が壁を通して聞こえてくる。布団の中で眠れない寅さんと満男なのです。
「困ったことがあったら風に向かって俺の名前を呼べ」はこの作品の台詞でした。渥美清さんが言うと心にしみますな。
最後は凧が空を舞う映像で始まる日本の正月風景。夏がなくなり年末のみの公開になってしまったこの時代の定番です。

男はつらいよ 寅次郎の告白(4Kデジタル修復版)2020年11月08日

寅さん三十七本目。第四十四作、平成三年の公開。
寅さんと満男W主演の三本目、及川泉(後藤久美子)も連続出演三本目。前作で父親を訪ねて九州の日田まで旅をした泉ちゃん、今度は家出をして鳥取砂丘から満男に絵葉書を送って来ます。
東京での就職活動に失敗し、名古屋では再婚問題で母親と喧嘩をし、家を飛び出してしまったのでありました。葉書の文面から何かを感じた満男が名古屋に電話をかけてみると、そういう話だったのだ。居ても立ってもいられない満男はさくらが止めるのも聞かず、泉を探しに鳥取まで飛び出して行く。
さて、鳥取。古い家屋が並んだ水路のそばの路地をあてもなく歩いている泉ちゃん。駄菓子屋であんぱんを食べていると、店のおばあさんが気を利かせて家の中に上げてくれる。泉の様子から察したのだろう「晩御飯も食べて行きなさい」。おつかいを頼まれた泉がお鍋に豆腐を入れて路地を歩いていると水路を挟んだ向かい側に寅さんの姿が。思わず走り出し小さな橋の上で寅さんに抱きついて泣き出してしまう。落とした鍋が水の上をドンブラコと流れて行く。その後、二人はおばあさんの家で晩御飯をご馳走になり、そのまま一晩泊めてもらうのであった。二間しかないという古い家が実にいい雰囲気なのだ。おばあさんと二人で寝るのが嫌な寅さんは泉に間に入ってもらい「川の字」に布団を敷いて三人で寝るのだった。
翌朝、おばあさんの命令で呼び出された孫の男が鳥取砂丘まで寅さんと泉を車で送っていく。小高い丘のような砂丘のてっぺんに座ってじっと待っていた満男は泉の姿を見つけると転げ落ちるように走り出すのでした。
映画はすでに終盤です。しかしこのタイミングでカーツ大佐のごとく、マドンナが登場します。寅さんの昔馴染みの料亭で三人は食事をするのですが、そこに乗り付けた車の中から一人の女が下りて来ます。女将の聖子さん(吉田日出子)で、寅さんが昔惚れていた女であった。彼女は食事だけで帰ろうとするところを引きとめようとするのだが電車の時間があるからと辞退する三人なのであった。ところが女将の旦那であるかつての恋敵が死んだことを知ると、満男に「香典と花を買ってこい」と命令する寅さん。その場にとどまって墓参りをする。夜は料亭に一泊することになるのでした。満男と泉を寝かせた後、一階の座敷で差し向かいで酒を酌み交わす寅さんと女将。
出演時間は短いのですが、それまでの話を吹っ飛ばすほどの存在感を発揮する聖子女将。死んだ夫にはさんざん泣かされて寅さんを選ばなかったことを後悔していると、部屋の電気を消して迫ってくる場面は迫力であった。女は怖い。

四十二作以降の作品は満男が様々な理由から柴又から遠く離れた日本のどこかで寅さんと合流する展開になります。満男は渡世人ではなく堅気の人間ですが、自分の伯父の人生をほんの少しだけ垣間見る。

昭和の終わりから平成以降は、出演者たちの高齢化が進んでいます。満男、泉、三平ちゃんなど若い世代の対等がマンネリ化した映画に新鮮味を加えているのかな。
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