男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花 特別篇(4Kデジタル修復版)2020年11月29日

寅さん四十一本目。第四十九作、平成九年の公開。
事実上のシリーズ最終作は四十八作の「紅の花」だと思います。次の四十九作は公開日、出演者、ロケ地も決定していて、山田監督以下スタッフキャスト達は準備を進めていたらしいですが、主役の渥美清さんが亡くなってしまったので、幻になったとか。
この映画はタイトル前の冒頭とラストシーンが現在における満男の出演場面として追加されていますが、本編は二十五作の「ハイビスカスの花」です。
靴屋のセールスマンとして鈍行電車に乗って地方を営業して回っている満男くん。東海道線、駅のホームで缶ビールを飲んでいる。ふと見上げると向かいのホームに伯父さんの姿が。だが目の前を電車が通過するとともに見えなくなってしまう。「伯父さんに会いたい」と切実に考える満男は自分の子供の頃を思い出す。
主題歌を歌っているのは八代亜紀。正直、渥美清さんよりも歌がうまい。さすが本職の歌手である。シリーズ中でも「俺がいたんじゃお嫁にいけぬ」の歌詞はなかなか聞けないから貴重である。
ラストシーンは柴又に帰った満男がくるまやの前にたどり着く。夜である。店前で後片付けをしている三平ちゃんと加代ちゃん。「おふくろいる?」話しかけると「もうお帰りになりましたよ」帝釈天の参道を見下ろす映像と静かな音楽で「終」。
エンドロールのない映画を四十本も続けて鑑賞したのは初めての経験であった。ラストシーンとともに「終」というシンプルな幕は独特の余韻をもたらす。平成の時代に至るまでこのスタイルを維持していた「男はつらいよ」は素晴らしい。エンドロールのない映画なんて、今後もう見られないんじゃなかろうか。

私にとって、令和二年は「男はつらいよ」の年となりました。が、未見の作品がありまして、それは第二、三、四、五、六、七、八、十、十二作です。もっとも初期の作品群ですね。イキがよく血気盛んな時期の寅さん、是非とも鑑賞したいと思いますが、今後、劇場公開を期待するのは難しいかもしれない。
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