四人組がいた。2019年04月07日

高村薫の本は好きなのだが「太陽を曳く馬」以降の作品は読んでいなかった。「晴子情歌」の頃から難解な旧仮名遣いの表現が出てきて、それでも母子の話のうちは良かった。「新リア王」では仏教の専門用語が何の説明もなく普通に飛び交い、「太陽を曳く馬」に至ってはオウムの教義に関する考察にまで頭を使わねばならぬようになる。
宗教に関する予備知識がなければ読み解くことが難しく、寺の和尚ならばわかるのだろうが、信心からは程遠いところに存在する一般市民の私などには、物語の中に入り込むのに敷居が高くなってしまった。仕事を辞めて暇な時間ができたら専門書を紐解いて学習してからあたらめて読み直してみたい。
「四人組がいた。」は私の中では十年ぶりの高村薫の作品である。
舞台は山奥の寒村。村の郵便局兼集会所に集うジジババ四人の話で、平たく言えば現代における老人達のお伽話である。現代社会の風刺が毒々しく語られているが、毒薬の作用が限定的なテレビの松本人志みたいに本人は面白いつもりでも見る人によってはちっとも笑えない。そんな小説だと思いました。
TNB(田んぼ)48の「ベビーローテーション」とか、かなりベタベタなギャグがあり、これは本当に、かつて旧仮名遣いと仏教で私の脳みそを悩ませたあの高村薫の文章か、と。
お伽話の短編集。また読みたいと思ったので、今度は離島の漁村とかを舞台にして描いてください、高村先生。

それまでの明日2018年02月16日

原尞(はらりょう)作の私立探偵沢崎シリーズ。「愚か者死すべし」以来、十四年ぶりの新作が出るという。
にわかに信じられなかったが、どうやら本当らしい。早川書房のWEBで告示されているのを確認した。
2018年3月1日発売決定、題名は「それまでの明日」
これまでの著作は長編が四、短編集は一のみ。年代は処女作が1988、二作目が1989、短編集が1990。長編三作目の「さらば長き眠り」が1995年。ここで一旦シリーズの大まかな流れが完結していて、その後期待していた新作は出ず、時は流れた。一連の作品の記憶が脳みその箪笥の奥に片付けられた頃、「新シリーズ第一弾」の触れ込みで登場したのが「愚か者死すべし」だった。2004年、実に九年ぶりの新作で、読後の正直な感想は別にしても、とにかく沢崎シリーズの復帰に喜びを覚えていた。後記による作者曰く「本作につづく第二作、第三作の早期の刊行をもって云々」という事で、次作を期待していたのだが、続きはなかった。


今年になって「さらば長き眠り」の文庫本を再読する機会があり、久しぶりに思い出して、原尞のことをWEBで検索してみたら、2018年3月1日発売決定、の記事に遭遇してしまったわけである。
刊行を記念して紀伊国屋書店において作者のサイン会があるという。他の誰でもない原尞に会えてサインがもらえるのである。私は彼の長年のファンである。この機会を逃したら次回は三十年後になるかもしれない。
迷うことはないので紀伊国屋に電話して「それまでの明日」の予約をし、サイン会の日時と受付場所の確認をした。私は伝説の作家に会いに行く。

大川(旧淀川)2017年07月18日

大坂城の北側を流れている川。豊臣期の大坂城では天然の堀で、北の総構として城の外郭であった場所である。
今日は天満橋で仕事があり、帰り道で地下鉄に乗る前に、地上の景色を写真に収めて来た。
今、万城目学の「とっぴんぱらりの風太郎」を読んでいる。「大坂の陣」の頃を駆け抜けた伊賀忍者たちの話である。まだ途中であるが、最後には大坂城が焼け落ちて豊臣氏が滅亡し、その後も徳川による偏執的なまでの虐殺や城郭の殲滅が行われるのは史実なので、少なくとも実在の登場人物たちの行く末は予想ができるのである。
万城目さんの小説、今回は過去の作品と比べて、根底に暗い雰囲気が漂っていて少なからず意外な印象を感じずにはいられない。豊臣家の悲劇は日本における、その後四百年の歴史を変えてしまったのだ。

ソロモンの偽証2015年03月30日

全6巻。
当初、自殺だと思われた、ある中学生の墜落死。「殺人だ」との怪文書がマスコミに流出し、札付きの不良少年が容疑者として、世間の好奇の目にさらされる。「あいつならやりかねない」
昨年の大晦日から読み始めて、本日読了。
中学生の学校内裁判なんて、ありえないような話が、きちんと説得力を持って丹念に描かれている。
作者の「模倣犯」は、強烈な本で、あまりのリアリズムに絶望感を抱かされてしまったのだが、「ソロモン偽証」は、「魔術はささやく」や「龍は眠る」のように、さわやかな読了感を与えてくれるので、いい。

「魔術はささやく」「龍は眠る」2014年09月22日

宮部みゆきは「火車」から入った。その後「模倣犯」と「理由」を読んだ。
リアルで怖い作風だと思った。日常の中に潜んでいる毒をあぶり出し積み重ねたような小説だ。

親が入院した。手術の日、病院の廊下で兄妹と待っている間、宮部みゆきの本を読んでいた。
先の三本に比べると特に「龍は眠る」は、超能力の世界かと思えて、やや私の好みではないが、描かれた人間の業はどこまでも現実的で、今の自分の周辺でも存在しそうである。

女性の作家では山崎豊子と高村薫と宮部みゆきが好きだ。
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