明日香村 ― 2025年09月05日

私が吉野に釣りに行く時、途中で橿原から明日香に向かって国道を通過するのだが、この周辺は飛鳥時代、藤原京だった場所である。平城京(奈良)や平安京(京都)に比べると現代においては目立った建造物がなく、地味なことこの上ないが、1300年前は日本の首都だったのは間違いがない。
藤原京以前に都だった場所はもう少し南の明日香村周辺だという。近鉄吉野線沿いの道路標識にキトラ、高松塚、石舞台などの表示がある。これまで、車で散々通過しているが、近くを通っただけで、現場には行ったことがなかった。
今般、知り合いのAさんから明日香に行きたいとのリクエストがあった。車をお持ちではないので、私に運転せよという。普段からお世話になっているので、引き受けることにし、飛鳥駅にて落ち合うことにした。駅の東側一帯が明日香村であり、日本史における重要な遺跡がそこら中に点在している。見晴らしがよく、なだらかな平地が広がっており、気候も穏やかだし、今回初めて車で走ったが、住みやすい環境で大昔には人が集中したであろうことは容易に想像ができた。
駅前にレンタサイクルがあり、多くの若者たちが自転車で移動していたが、本当に自転車で走るのが楽しそうな地形なのだ。時間が限られていたので、何ヵ所かしか行くことができなかったのですが、私が最も良かったと思ったのは高松塚古墳だった。子供だった昭和四十年代、大発見だと日本中が大騒ぎになったことを覚えている。西壁女子群像は特に有名であり、当時、カレンダーになって、誰かの家の玄関の土間の壁に掲示されていたものである。
現地は山の中の田んぼの横にあって、今は通路が整備されて容易に歩いて行くことができますが、辺鄙な場所であることには変わりがない。私らにとってはアクセスの不便さが幸いしたのだろう、観光客は少なく、ゆっくりと見物できました。有名な壁画については実物は見ることはできないが、そばに高松塚壁画館がある。日本画家が現物を見ながら詳細に再現した実物大の模写が展示されています。漆喰の剥離や流入した泥水の跡までもが精密に描かれていて、一見の価値があります。劣化が問題になっている壁画ですがここは発見当時のものが再現されているので、考え方によっては本物よりも綺麗な絵を見ることができるのです。
日が暮れる前に切り上げて、Aさんを橿原神宮前の駅まで送って行き、私は国道から南阪奈道路に入って大阪に帰った。

TOKYO MER 走る救急救命室 南海ミッション ― 2025年09月09日
 
もとはテレビドラマで、四年前に放送されていたものです。入院中に病室のベッドで見ていました。体が弱っている時にこのような医者が必ず助けてくれるという話には心休まるものがあります。現実路線の社会派よりも非現実的でも御伽噺で夢を見させて欲しいのです。医師の喜多見ですと、患者に話しかける鈴木亮平さんの芝居はいい。
鹿児島沖縄周辺の離島を舞台にしていてNANKAI MERが活躍するのですが、題名通りTOKYO MERとして、あくまでも東京にこだわっています。シリーズとしての統一感を意識したのだと思います。
平日でしたが国宝の時と同じくらい観客が入っていました。国宝は年配客が多かったのに対しTOKYO MERは老若男女まんべんなく集まっていました。間違いのないヒット映画ですね。
白熱電球と映画 ― 2025年09月15日
最近ビデオで見た映画
台風クラブ
日曜邦画劇場にて鑑賞、相米慎二監督作。翔んだカップル、セーラー服と機関銃に続いてリアルタイムで見た記憶があるが、まだ昭和だった四十年前の事なので、内容は憶えていなかった。木造の校舎とか国鉄時代の原宿駅とか当時の風景社会風俗も含めて今見ると完全に時代劇だが、お馴染みの俳優の皆さんが恐るべき若さで画面に登場し、しばしのタイムスリップを味わった。映画の中の登場人物たちと同じ時代を生きてきたから記憶の中のあの頃の空気感が甦るのだ。バック.トゥ.ザ・フューチャーは1985年から1955年に遡る話で時間差は30年だが、これは2025年から1985年への旅だからさらに10年先に戻ったわけだ。解説で54才になった工藤夕貴さんが出てきて、夢から醒めた。
寝ても覚めても
唐田えりかがいい。とにかくいい。すごくいい。いいものはいい。相手役の東出昌大も本能のままに女のエキスに吸いつくみたいな芝居が自然に見えるから不思議である。吸いつかれて吸い返す唐田えりかがまたいいのだ。東出昌大は同じ顔をした男という設定で二役を演じている。主役二人とも関東出身だと思うが時々出てくる関西弁の台詞に違和感は感じなかった。原作は女性作家による恋愛小説で揺れ動く女性の心理を繊細に描いたものだという。複数の国際映画祭に出品され、多くの国で配給されたと聞くが、好評だったというのはわかる。繰り返すが唐田えりかがいい。
殺人の追憶
実際に起きた連続殺人事件を題材にした韓国映画。農村地帯で若い女性たちが暴行されたのち殺される。被害者の衣類で手を縛るとか、帽子のように頭から下着を被せるとか、実際の犯行と同じような状況が再現されているという。ソウルのような都会ではなく、土の匂いがする田園地帯が舞台となっていて、古い家が立ち並び、夜は暗い。防犯カメラがない。証拠を捏造し被疑者に暴行を加えて自白を強要するという不良刑事が主人公で鑑識のやり方も前時代的であり、正体の見えない犯人像も加わって不気味な映画になった。韓国にはDNA鑑定をする設備がなくアメリカに依頼するという話になっている。無力感が漂う最後、風に揺れる秋の稲穂で黄色く染まった画面が印象に残った。






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