男はつらいよ ぼくの伯父さん(4Kデジタル修復版)2020年11月04日

寅さん三十五本目。第四十二作、平成元年の公開。
今年六月の第一作「男はつらいよ」から他の映画をほったらかして、ずっとリバイバル公開を追いかけてきましたが、ついに「満男シリーズ」と呼ばれている一連の作品群に到達いたしました。寅さんのおいである満男がもう一人の主人公として作品の中核を担うようになるのです。時代は平成、満男は浪人生になっています。
満男には惚れた女がいる。高校時代の後輩で名前は及川泉(後藤久美子)という。彼女は両親の離婚をきっかけに母親と一緒に名古屋に引っ越していってしまったのだ。実は文通しているのである。恋からくる妄想で勉強が手につかない満男はとうとう女に会うために家出をしてしまうのであった。いつの間にやら単車の免許を習得していた満男は、オートバイに乗って名古屋を目指すのだ。鈍行の電車やバスでの移動を好む寅さんとは対照的な姿であります。名古屋で泉の母親(夏木マリ)会い、泉が叔母のいる佐賀で暮らしていることを聞いた満男はそのまんま高速道路に乗って九州に向かう。この映画の中では満男の旅がメインになっているのだ。
佐賀に到着した満男は地方の旧家によくあるような巨大な家の前に立ち、玄関がわからずに戸惑っているところ、泉が学校から帰ってくるのだった。再会を喜び合う二人だったが、すぐに日が暮れてしまう。その夜、満男は地元の旅館を探し出し、料金が安くなるということで相部屋に通されるのですが、そこの相手がなんと寅さんなのだった。
寅さんがくるまやに電話をかける。さくらが「大変なのよ。満男が家出したの」と泣き言をいう。それに答える寅さんは優しく満男と交代、電話口で大泣きするさくらと満男。「青春よ」と呟く寅さん。
満男と泉ちゃんの恋物語が軸として進行しますが、佐賀で出会った泉の祖父に気に入られた寅さんは泉の叔母さんの寿子(壇ふみ)に好意を持ったこともあり、満男と一緒に勧められるがまま晩飯を食べ、そのまま宿泊することにするのでした。
寿子の夫は堅物の高校教師で、唐突な客人たちを快く思ってはいない。バイクを飛ばして東京から泉に会いにきた満男のことも「浪人生が勉強もしないで高校生の少女に会いにくるなんて」と嫌味な言い方で非難する。
渥美清と吉岡秀隆のW主演となっている作品で、クライマックスは九州から柴又に帰った満男が家族や地元の人々から歓迎される場面です。そこに寅さんが電話をかけてきます。電話を通してくるまやの人々が入れ替わり立ち替わり寅さんと話そうと頑張る姿が映されます。遠く離れた地方の駅で公衆電話に硬貨を投入しながら受話器に向かって語りかける寅さん、やがて硬貨が途絶えて通話がプッツンと切れる。晩秋の風が吹く中、一人駅に佇む寅さんは、寂しくなったのだろうか、目の前にいる学生たちに声をかけるような仕草を見せる、、、。
ラストシーンはどこかの神社での正月です。「平成二年」の文字が見えます。そう、三十年前の日本の風景なのですよ。

この作品の中では電話の描写が印象に残ります。電話は通話の道具であります。私は公衆電話を頻繁に使っていた経験がありますので、硬貨がなくなって会話がプツンと切れてしまう感覚が懐かしく感じられるのであります。

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