夏の砂の上2025年07月08日

小さな子供を亡くし、働いていた造船所は潰れ、妻は浮気をしている。小浦治の虚無的な佇まいと陽炎が立つ夏の日差しが鬱陶しい、長崎。
妹の阿佐子が娘の優子を連れてきて、しばらく預かってくれと言い、男のところへいってしまう。優子は高校生、17歳。治の妻の恵子は、たまたま家にいたに過ぎないが、実は別居しているのだ。実の兄とはいえ、男一人住まいだとわかっていたら、いくらなんでも高校生の娘を預けるには躊躇したかもしれない。
阿佐子が去ったのち、妻の恵子もじゃあねと、家を出ていき、伯父と姪が残る。妻の無関心さが際立つ場面である。同じ夏休みの映画でも、菊次郎の夏みたいに中年男と少年ではなくて、中年男と若い女の夏。私のような俗人にとって、この設定は何やらいかがわしい予感がするが、優子さんは小浦治の家にバイト先の大学生を連れ込んで、やらしいことをしているので、観客が心配するような伯父と姪の淫らな関係にはならない。あくまでも肉親の伯父さんと姪では、ある。緩いが治も親代わりとして優子を気にかけている。
ただ、一緒に夏を過ごすうちに優子はだんだんと治の醸し出している虚無感に共鳴するようになる。劇中では語られることはないが、もしかしたら自身の生い立ちに何らかの共通点があるのかもしれない。好意を寄せてくる大学生に惚れているようには全く見えず、むしろ突き放している。
幽霊のような伯父と姪が炎天下の長崎で暮らす夏休み。乾ききった砂のような心に潤いをもたらす雨は降るのでしょうか。

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