峠 最後のサムライ2022年06月17日

司馬遼太郎原作、小泉堯史監督、役所広司主演の幕末もので、長岡藩家老河井継之助の人生が描かれている。凝った構図やカメラワークなどはなく、安定した目線でベテラン俳優達のどっしりとした時代劇を堪能できる。徳川慶喜の大政奉還に始まり、鳥羽伏見の戦いによって戊辰戦争が勃発する。薩摩長州が率いる西軍が会津藩を中心とする東軍を征伐する名目で京都から本州を北上する。途中で衝突するのが長岡藩なのだ。旧幕府側に忠義を感じ、西軍を快く思っていない藩主の意向を汲むかたちで河井は中立を貫こうとしたが叶わず、五万の西軍相手に戦争になる。最後の武士として戦いを挑む河井継之助と数少ない長岡藩士たち。多くの者たちが死に、残った者たちは会津へと逃れてゆく。未来はなく、やがては滅ぼされる運命にあるのだ。松たか子が演じる河井の妻と、永山絢斗が演じる河井に仕える従僕が、実に慎ましく、見ているものの心を打つ。主人に寄り添い、黙ってついてゆく行為は、尊敬と愛情、畏怖がなければ成り立たない。
エンドロールで流される主題歌を歌うのは石川さゆり。時代劇にはやっぱり演歌が似合う。観客は白髪頭の爺さんが多かった。

副題のサムライは漢字で侍とした方がいいと思うが何か意図があるのだろうか。

トップガン マーヴェリック2022年06月19日

オリジナルは1986年公開のトップガン。私が社会人になりたての頃に見た映画である。
二十代の頃、運転していた車はマニュアルミッションで、ハンドルはパワステではなく、窓を開けるにも座席の横のハンドルをクルクル回して操作していて、カセットテープで音楽を聴いていた。知らない場所に行くときにはあらかじめ道路地図をめくって道を覚え、当日には頭上の道路標示を見て現在地を確認しながら、時々路肩に止まっては地図とつきあわせて走行していたものだ。
前作で活躍したF-14が少し登場するのだが、現代のパイロットから過去の遺物とか言われていた。イメージとして国産車で例えるならば、青春時代のスターレットと今時のプリウスくらいの落差だろうか。
クライマックスは渓谷を縫うように地面スレスレの低空飛行で飛んだのち、地上にある豆粒みたいな標的に爆弾を落とす、というものだった。完全にスター.ウォーズのデス.スター攻略の場面と同じである。ネタは他の映画からひろってきたものかもしれませんが、そんなことはどうでもいいのだ。
ジェット戦闘機に乗って空をかっ飛んでいるという感覚を映画館の大画面で楽しめるのだ。この楽しさに今も昔もないのです。

ベイビー.ブローカー2022年06月29日

勝手に単純な筋書きを想像していましたが、違いました。ロードムービーと聞いていたので、赤ちゃんを車に乗せた怪しげな男女のグループが韓国中を旅して回る、そのような物語を思っていたわけです。
クリーニング屋のおっさんと児童養護施設員の若者が赤ちゃんポストから赤ん坊を盗んで、売り飛ばそうとする話である。登場人物たちはみんな、格差社会と呼ばれる中では貧乏な方な人々である。古くて狭くて薄暗い建物に住み、ドアの壊れたボロ車に乗っている。序盤は人身売買で生計を立てている犯罪者とそれを尾行する私服捜査員の姿を追ってゆく展開なのですが、いきなり犯罪者の車に赤ん坊の母親が同乗するという出だしになります。
途中で綺麗な景色は出てきません。私は韓国に行ったことがないので、よくわかりませんが、日本国内で例えるならば、高速道路を使わずに下の国道を使って日本海側の町を旅しているかのような感じを抱きました。
アクセスカウンター