パラサイト 半地下の家族2020年01月13日

高台の豪邸を見上げる庶民(もしくは貧民)というと黒澤明の「天国と地獄」を思い出してしまう年寄りな私ですが、この作品における落差の描写はもっと徹底しています。大邸宅の門をくぐって坂道を下って、長い階段をこれでもかこれでもかと延々と下りてゆく。その先に見える街並の風景はだんだんと荒廃していき、日光も届かないのかと錯覚するような暗くて不衛生な半地下の住宅にたどり着くのでありました。
暮らしているのは失業中の父母と浪人生の兄妹の四人家族。内職をしながらなんとか食いつないでいます。半分地下に埋もれた部屋から見える窓の外の景色は下町の路上で、酔っ払いが立ちションしているのを見上げるような角度なのだ。よくもまあこのような構図を思いついたものである。映画の作者本人が体験したことのある見晴らしなのではなかろうか。そう思えるほど秀逸な場面だった。
長男がIT企業の社長とその家族が住む豪邸に家庭教師として雇われるのをきっかけに、ある計画を思いつき、金持ちと貧乏の家族が交わっていくのです。
日本の社会も同じようなものなのかもしれませんが、韓国における受験戦争の厳しさや極端な格差社会が垣間見えるようです。競争に勝ち抜き豊かな暮らしを享受している金持ちにはどこか人間性が欠落したような人物像を想像してしまいますが、この映画に出てくる社長一家は基本的に善人であります。その子供達も育ちがよくスレていません。憎めない人々です。
故に見方によっては幸せな家庭に疫病神が取り付いていくような感覚で、なんともいえない苦味がありました。

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