男はつらいよ 寅次郎の縁談(4Kデジタル修復版)2020年11月15日

寅さん三十九本目。第四十六作、平成五年の公開。
日本の歴史上、平成五年はちょうどバブルがはじけて飛んだ直後である。導入部は満男の就職活動の話で、見ているこちらの方も辛くなるような内容だった。数十社面接を受けても内定がもらえない。すがるような気持ちでエントリーした中小企業からも、また不採用の電話があり、気持ちがプッツンしてしまう。さくらや博と言い合いになり、そのまま家を飛び出してしまうのだ。そして一週間がたちました。
家族が心配しているところ、くるまやに寅さんが帰って来ます。話を聞きつつも「テヤンでぃ。俺なんか十六で家をおん出て二十年帰らなかったんだぞ。なんだ一週間くらい」と。寅さんにかかればその程度のことなのですが、堅気の家族からすれば大事なのは当然。入り口で寅さんが受け取った郵便小包は満男が送ったもので「心配するな僕は元気に生きている」と手紙が添えられていました。伝票に書かれた住所は香川県琴島。今回は満男を連れ戻す旅なのです。
琴島は過疎化しつつある瀬戸内海の小島で、満男は海で地元の人たちの仕事を手伝っていた。若者のいない島で力仕事を引き受けてくれる満男は老人たちからありがたがられていたのだ。定期船で診療所に通ってくる看護婦の亜矢ちゃん(城山美佳子)とも仲良くなっていた。海辺の堤防で籠を背負って亜矢ちゃんと楽しく話しているところ前の方からこっちに向かってまっすぐに歩いてくる伯父さんの姿を発見し驚愕する。
お前のねぐらになっている一軒家に連れていけと満男に命令する寅さんだったが島の長い石段を登っているうちに息切れを起こして途中でフラフラになってしまう。そこで出会うのが葉子さん(松坂慶子)である。満男が世話になっている家で療養生活をしているおかみさんなのだった。一目で葉子さんが気に入った寅さんはその日は一泊することにする。その夜、島の人々が集まって宴会が始まり、寅さんは寄り添う葉子さんの隣で楽しく過ごすのであった。
翌日は時化。連絡船が欠航し、帰り損なった寅さんはそのまま逗留を続けることになる。すっかり居心地が良くなってしまった寅さんと満男、数日間それぞれが葉子さん亜矢ちゃんとともにまるで琴島の住人になってしまったかのように暮す。心が通じ合ったかと思った途端、去っていくのが寅さんの習性なのですが、どうやら満男にも伝染したらしい。
別れも告げずに船に乗ろうとする満男と寅さん、桟橋で居合わせた亜矢ちゃんは泣いて怒り出し、走って去っていってしまう。離れてゆく連絡船。島の風景を目に収める寅さんと満男。気がつくと戻って来た亜矢ちゃんが全力で突堤をかけてくる。突堤の先端で懸命に手を振って別れを告げる亜矢ちゃんの姿に満男は涙するのであった。

寅さんと満男の恋話が綺麗に同時進行する内容になっていて、瀬戸内の風景も相まって満男シリーズ中ではもっとも充実した回かもしれないと思います。
「浪速の恋」以来二度目のマドンナ松坂慶子の安定感。満男の相手役である城山美佳子は後藤久美子みたいな極端な美少女ではない。普通の女子なのですが、若くて健康的な容姿が魅力的です。満男に向かってまっすぐに好意を寄せてくるところがまた可愛らしい。四年間にわたって翻弄された及川泉が去り、満男が寅さん化した楽しい映画だった。
最後のセリフがいい。「満男、お前はまたフられたぞ。ざまあみろ」寅が言うと爽快なのだ。

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