海よりもまだ深く2016年05月30日

5月27日
題名はテレサ.テンの歌「別れの予感」から引用したものであるらしい。
是枝監督の作品の鑑賞は2008年の「歩いても歩いても」が最初だと思っていたのだが、作品リストを検索してみるとそれより二年前の「花よりもなほ」があった。時代劇も撮っていたのは意外な感じがした。
主人公の母親が住んでいるような昭和の佇まいが残った大きな団地は、私自身も暮らした経験があるので、懐かしく感じられた。個々の住宅における居住空間は狭いのだが、敷地内の建屋と建屋の空間が広く開けられていて、緑地帯が大きく公園も広い。大きな樹木も多数、植えられており、人工のものにすぎないけれど自然環境が豊かなのだ。古い団地で生活するという感覚は、例えば主人公が偶然に同級生と再会して立ち話をしてみたり、母親とたわいのない話をしながら蝶々がとまったという木を眺めてみたり、息子と二人で夜の滑り台に探検にいってみたり、建物の外側で、いろんなことが起こるのである。現代の巨大マンションは、庭のない一軒家というか運動場のない小学校というか、外で遊べないし、何かとの出会いも少ないのである。
実家での父親の仏壇と母親と息子と娘の関係は、作者の実体験が反映されているのかもしれない。
それにしても、未練たらたらで、息子にも愛情を示しているのに、阿部寛の元夫に対する真木よう子の元嫁の冷たさは、心に刺さった。完全に無視されても怒るのだろうが、構われるのも気色が悪い。子供の養育費だけいただいて、あとはほっといて欲しいというのが本音なのだろうか。
母親のヘソクリをめぐる実姉との静かなバトルも恐ろしい。世の中、金だ。
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